if-thenプランニングとは?習慣が続く「もし〜なら」の作り方
「今度こそ運動する」と決めても、なぜか行動だけがついてこない——足りないのは、やる気でも目標でもなく「その状況が来たら何をするか」の一文です。if-thenプランニングは、意志ではなく合図に仕事をさせる、研究の裏づけがある技術。定義から、たった3ステップのやり方、コピペで使える例文20、そして続かない日のための「もしサボったら〜」まで、この1本にまとめました。
月曜の夜、「今度こそ続けよう」と決めます。目標ははっきりしている——運動する、早起きする、勉強する。やる気だってちゃんとある。なのに金曜の夜には、シューズは玄関に、アプリは通知オフ、決意はいつのまにかなかったことに。目標はあったのに、行動だけがついてこない。多くの人がここでつまずきます。
足りなかったのは、やる気でも目標でもありません。「その状況になったら、具体的に何をするか」を先に決めていなかっただけです。じつは私たちの日常行動のおよそ43%は、ほぼ毎日・同じ状況で繰り返される習慣で、そのあいだ頭は別のことを考えています。続く人は毎回がんばっているのではなく、状況に行動をひもづけて自動で動いているだけ。if-thenプランニングは、その「ひもづけ」を意図的に作る技術です。意志の強さではなく、設計の問題なんです。
この記事では、if-thenプランニングとは何かという定義から、たった3ステップのやり方、目的別にコピペして使える例文20、そして続かない日のための「もしサボったら〜」の作り方まで、順番にまとめました。読み終わるころには、今日の自分に合う「もし〜なら」がひとつ書けているはずです。
if-thenプランニングとは?
if-thenプランニングとは、「もしX(具体的な状況)になったら、Y(する行動)をする」と、行動する前にルールを1つ決めておく方法です。心理学では実行意図(implementation intentions)と呼ばれ、ニューヨーク大学のGollwitzerが1999年に提唱しました。目標を「いつ・どこで・どうやるか」まで先に固定するのがポイントです。
大事なのは、目標(goal intention)と実行意図(implementation intention)は別物だということです。「痩せる」「運動を習慣にする」は目標——どうなりたいか、です。一方「もし夜10時になったら、ストレッチを1回する」は実行意図——いつ・どこで・何をするか、です。多くの人は目標は持っていても、この「いつ動くか」を決めていないために動けません。研究者はこれを意図と行動のギャップ(intention–behavior gap)と呼びます。強く決意した人でも、実際に行動できるかどうかのばらつきは、決意の強さだけでは説明できない——if-thenは、この隙間に小さな橋をかける仕掛けです。
なぜ効くのか——研究が示す「2〜3倍」
if-thenで「いつ・どこで」まで決めた人は、目標だけの人より行動の実行率が約2〜3倍になります。運動の実験では、if-thenプランを立てた群の91%が1週間に運動したのに対し、立てなかった群は約38%でした(Milne ら, 2002)。94件・のべ8,000人超をまとめたメタ分析でも、中〜大の効果(d=0.65)が確認されています。
同じ「運動するぞ」でも、if-thenがあると実行率はここまで変わる
if-thenで計画した群
目標だけの群
if-thenで「いつ・どこで運動するか」まで決めた群は91%が実行。目標だけの群は約38%でした(Milne ら, 2002)。
なぜ、決めておくだけで実行率が上がるのでしょう。ポイントは、脳が「状況」と「行動」を前もって強く結びつけてくれることにあります。「もしXが起きたら」と一度決めると、その状況が来た瞬間、意識して決断しなくても行動が自動的に立ち上がる。つまりif-thenは、意志力を毎回すり減らす代わりに、合図のほうに行動を引っぱり出させる仕組みです。だから疲れている日や気分が乗らない日ほど、その差が効いてきます。
ちなみに「どれくらい続ければ習慣になるの?」という疑問は、それだけで一本の記事になります。目安だけ言うと、行動が自動化するまでの中央値は約66日、幅は18〜254日(Lally ら, 2010)。有名な「21日」は習慣研究にもとづく数字ではありません(一般向けにはロンドン大学(UCL)の解説が読みやすいです)。詳しくは習慣が身につくまでの期間にまとめたので、ここでは「if-thenで決めておけば実行率が上がる」という一点だけ持ち帰ってください。
if-thenプランニングのやり方——3ステップ
やり方はシンプルです。①もし(毎日必ず起きる具体的な合図)を決める、②なら(2分以内で終わる小さな行動)をつなぐ、③終わったら記録する——この3点セットを1つの文にするだけ。「もし歯を磨いたら、スクワットを5回して、今日のマスをタップする」のように書きます。
「もし◯◯したら → △△する → 記録する」の3点セット
「もし[いつもの行動]をしたら、[2分の行動]をして、すぐ記録する」
もし(毎日必ず起きる合図)
夜、歯を磨いたら
なら(2分でできる行動)
ストレッチを1回する
すぐ記録
今日のマスをタップ
合図(もし)は毎日勝手にやってきます。行動と記録は、その上に乗せるだけ——思い出す努力もやる気もいりません。
3つそれぞれに、つまずきやすいポイントがあります。まず「もし」は、時刻ややる気ではなく、すでに毎日やっている行動(アンカー)に乗せること。「朝7時に」より「歯を磨いたら」のほうが、合図のほうから毎日やってきます。次に「なら」は、最悪の日でもできるサイズまで小さく。「30分走る」ではなく「靴を履いて外に出る」。そして「記録」は、同じ一文にくくりつけて忘れないように。この3つが1本につながると、思い出す努力もやる気もほとんどいらなくなります。習慣化の全体像をもう少し引いて見たい人は、習慣化のコツに4つの原則としてまとめてあります。
そのまま使える例文20(目的別テンプレート)
目的別に、コピペして使えるif-thenの例文を20個そろえました。合図(もし〜)は「すでに毎日やっていること」に、行動(〜する)は「2分で終わること」にするのがコツです。自分の生活に合わせて、時間や場所だけ書き換えてください。
| 目的 | もし〜(合図) | 〜する(2分の行動) |
|---|---|---|
| 運動 | 帰宅して鞄を置いたら | ウェアに着替えて外に出る |
| 運動 | 昼休みが始まったら | 階段を1往復する |
| 運動 | 歯を磨いたら | スクワットを5回する |
| 早起き | 23時になったら | スマホを充電器に置く |
| 早起き | 目覚ましが鳴ったら | まずカーテンを開ける |
| 早起き | 起きたら | 一番好きな飲み物をいれる |
| 勉強 | 夕食の片づけが終わったら | 教材を開いて1問だけ解く |
| 勉強 | 電車に乗ったら | 単語アプリを1画面ぶん見る |
| 勉強 | 机に座ったら | 昨日の続きを5分読む |
| 食事 | 席についたら | 先に水を1杯飲む |
| 食事 | お菓子を食べたくなったら | まずナッツを一握り食べる |
| 食事 | 夜スナックが欲しくなったら | 歯を磨く |
| スマホ・集中 | SNSを開きたくなったら | 先に深呼吸を3回する |
| スマホ・集中 | 仕事を始めたら | スマホを別の部屋に置く |
| スマホ・集中 | 通知が来たら | 今の作業を1文だけ進めてから見る |
| お金・片づけ | 給料が入ったら | 先に3,000円を貯金に回す |
| お金・片づけ | 玄関を通ったら | 床のものを1つ拾う |
| お金・片づけ | コーヒーを淹れるあいだ | シンクだけ洗う |
| お金・片づけ | 寝る前になったら | 机の上を30秒だけ片づける |
| お金・片づけ | 買い物カートに入れる前 | 本当に要るか10秒考える |
早起きの例をいくつか入れましたが、せっかく早く起きた朝の時間をどう使うかは、朝活の始め方に具体例をまとめています。どの例文も「小さすぎて笑えるくらい」でちょうどいい。物足りなければ、体のほうが勝手に続けたくなります。逆に、最初から大きくすると合図とつながらず、初日で息切れします。
三日坊主対策:「もしサボったら〜」の作り方
続かない一番の原因は「1日サボったこと」ではなく、サボったあとに全部を投げてしまうことです。だから、うまくいく計画だけでなく、失敗したときのif-then(コーピングプラン)も先に決めておきます。「もし1日サボったら、翌日に最小版を1回やって帳消しにする」——これを、まだ落ち着いている今のうちに文章にしておくのです。
コーピングプランには2種類あります。ひとつは誘惑に備える型。「もしスマホを触りたくなったら、代わりに水を1杯飲む」「もし甘いものが欲しくなったら、先にナッツを食べる」のように、崩れやすい瞬間の逃げ道を先に用意します。もうひとつは回復に備える型。「もし1日できなかったら、翌日に最小版を1回やる」「もし3日空いたら、責めずにいちばん簡単な1つから戻る」。この2つを持っていると、計画は「うまくいく前提」から「つまずいても戻れる設計」に変わります。三日坊主そのものを仕組みで乗り越える考え方は、三日坊主を克服する仕組みにさらに詳しくまとめました。
ここで数え方をひとつ変えてみてください。「連続◯日」ではなく、「今月やれた日の数」を数えるのです。連続記録は、たった1日の抜けを、その月全体の見出しにしてしまいます。でも1日の抜けは、習慣が身につくかどうかにほとんど影響しません(Lally ら, 2010)。切れたのは記録の連続だけで、あなたの習慣そのものではない——だから翌日つなげば、それでもう帳消しです。
うまくいかないときのチェックリスト
if-thenを作ったのに続かないときは、たいてい3つのどれかです。①合図(もし〜)が曖昧、②行動(〜する)が大きすぎる、③記録していないので続いている実感がない。この順に見直すと、ほとんどの計画は立て直せます。
- 合図はあいまいになっていませんか。「時間があったら」ではなく「歯を磨いたら」。毎日必ず起きる、具体的な行動を合図にします。
- 行動は大きすぎませんか。 続かないときは、たいてい大きすぎます。「30分」ではなく「1回」「1問」「1ページ」まで小さく。
- 記録していますか。 続いている実感がないと、脳はやめる方向に動きます。行動と同じ一文の最後に「記録する」を入れておきます。
- 回復ルールはありますか。「もしサボったら、翌日に最小版を1回」。切れたあとの戻り方を、先に決めておきます。
それでも「記録が続かない」なら、原因は意志ではなく道具かもしれません。手が止まる場所(紙が遠い、アプリを開くのが面倒)を1つ減らすだけで、ぐっと楽になります。自分に合う記録の道具は習慣化アプリのおすすめで比べています。そして最後にひとつ——完璧主義には気をつけて。「全部きれいに埋める」を目指すと、1マスの空白で嫌になります。目標は満点ではなく、先週の自分より1日でも多くやれること。それだけで、その仕組みはちゃんと機能しています。
正直に:モモデイズはif-thenの「記録」のために作りました
正直にお伝えすると、モモデイズは私たちが作っている習慣トラッカーです。だからこのセクションは、それを踏まえて読んでください。作るときに設計図にしたのが、まさにif-thenの3ステップ目——「記録」でした。記録はワンタップ(小さく)、ウィジェットが今日のマスをホーム画面に出しておくので「もし〜したら、記録する」を合図の隣に置けます。タップした瞬間には、眠っていたモモがぱちっと目を覚まし(すぐのごほうび)、そして連続日数が切れて責めてくる画面はどこにもありません(数えるのは、やれた日の数だけ)。かわいくて静かな相棒が合いそうなら、無料で試せます。壁のカレンダーと赤ペンのほうが合うなら——それも本気でおすすめです。合図さえ決まれば、道具はあなたの味方です。
if-thenプランニング——よくある質問
if-thenプランニングとは何ですか?
「もしX(具体的な状況)になったら、Y(する行動)をする」と、行動する前にルールを1つ決めておく方法です。心理学では実行意図(implementation intentions)と呼ばれ、1999年にGollwitzerが提唱しました。「痩せる」のような目標を、「もし夜10時になったら、ストレッチを1回する」のように、いつ・どこで・何をするかまで具体化するのが特徴です。
if-thenプランニングと目標を立てるのは何が違うのですか?
目標は「何を達成したいか(例:運動を習慣にする)」で、if-thenは「その状況が来たら具体的に何をするか(例:もし帰宅して鞄を置いたら、着替えて外に出る)」です。多くの人は目標は持っていても、いつ動くかを決めていないために行動に移せません。if-thenはこの「意図と行動のギャップ」を埋める道具です。
if-thenプランニングは本当に効果がありますか?
はい、複数の研究で確認されています。運動の実験では、if-thenプランを立てた群の91%が1週間に運動したのに対し、立てなかった群は約38%でした。94件・のべ8,000人以上をまとめたメタ分析でも、目標だけの場合を上回る中〜大の効果(d=0.65)が報告されています。
三日坊主でもif-thenプランニングは続けられますか?
続けられます。コツは、うまくいく計画だけでなく「もしサボったら〜」という回復のif-thenも先に決めておくことです。たとえば「もし1日できなかったら、翌日に最小版を1回やって帳消しにする」。1日の抜けは習慣形成にほとんど影響しないので、責めずに翌日つなげば大丈夫です。
習慣になるまでどのくらいかかりますか?
ロンドン大学の研究では、新しい行動が自動化するまでの中央値は66日、個人と行動による幅は18〜254日でした。有名な「21日」は習慣研究に基づく数字ではありません。数週間で身につかなくても失敗ではなく、ただの途中経過です。
出典・さらに読む
- Gollwitzer (1999), “Implementation intentions: Strong effects of simple plans” — American Psychologist 54, 493–503
- Gollwitzer & Sheeran (2006), “Implementation intentions and goal achievement: A meta-analysis” — 全文PDF(NCI/DCCPS)
- Milne, Orbell & Sheeran (2002), 運動参加を促す動機づけ×実行意図の実験 — British Journal of Health Psychology 7, 163–184
- Lally ら (2010), “How are habits formed” — European Journal of Social Psychology 40, 998–1009
- UCLニュース — 習慣の形成にはどれくらいかかる?(66日の一般向け解説)
- Sheeran & Webb (2016), “The Intention–Behavior Gap” — Social and Personality Psychology Compass 10, 503–518
- Wood, Quinn & Kashy (2002) — 日常生活における習慣(Journal of Personality and Social Psychology)
- James Clear — 実行意図(implementation intentions)の一般向け解説
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